楽器を習っている方やバンドを組んでいる方など、自宅に防音室が欲しいと考えている方はたくさんいらっしゃるでしょう。
しかし、持ち家でも賃貸でも、防音室を兼ね備えた住宅は滅多にありません。
また、防音室は販売もしていますが、高額で誰もが簡単に手に入れるのは難しくもあります。
それならば、防音室を自作してみてはいかがでしょうか。
ここでは、自宅のクローゼットを防音室にする方法についてご紹介しましょう。
クローゼットに防音室を自作する時の注意点
自宅のクローゼットに防音室を自作する前に、いくつかの注意点があります。
作った後に、「こんなはずじゃなかった」などと後悔のないよう、事前に注意点をしっかりと確認してから取り掛かるようにしましょう。
まず気を付けたいのは、家の立地や住宅の気密性です。
例えば、家が戸建てが集合住宅か、戸建てでも隣家の位置はどのあたりなのかということは防音室の質を考える目安になります。
また、近年の家は住宅の気密性が高いものですが、築年数の古い家では普通に生活をしていても音漏れがする可能性があります。
その場合、防音室を作るにもよりしっかりとした作りにする必要があります。
さらに、クローゼットの形や広さも考えなくてはなりません。
ウォークインクローゼットのように十分な広さがあるのならば使いやすいのですが、広い分材料費が多く掛かるかもしれません。
しかし、半畳ほどで真ん中に棚が付いていたりハンガーパイプがあっては、中に入ることすらできない可能性があります。
そして、最後にどのような目的で使うのかということも考えなくてはなりません。
例えば、ボイストレーニングで使用するのとドラムをたたくのでは、そもそもの音量や音の高さ、振動などが異なります。
大きい音にはそれなりに大掛かりな防音を施す必要性があります。
本当に自作することで低コストになるのか、あるいは自作した防音室で防げる程度の音量なのかをしっかりと考えて制作することを考えてみましょう。
クローゼットに防音室を自作する時は防音の仕組みを考えよう
注意点について考えてみたところで、今度はクローゼットに防音室を自作する時にはどのようなことを意識するべきか考えてみましょう。
防音室を作る材料が分かっていても、仕組みを全く知らないのでは後で不備が出てくる可能性があります。
防音室は、ただやみくもに壁を厚くすれば良いということではありません。
もちろん、壁の厚さも重要ではありますが、効果的に音漏れを防ぐには「遮音」と「吸音」について考える必要があります。
それぞれ読んで字の通りではありますが、遮音は「音を遮ること」吸音は「音を吸収すること」を意味しています。
音は、遮ることができれば良いような気がしますが、遮るだけでは狭いクローゼットの中で大きく反響し続けるようになります。
そのため、音を吸収して小さくする吸音も意識する必要があるのです。
つまり、吸音材を使用して音を小さくし、小さくなった音は遮音材で跳ね返り、跳ね返った音を吸音材でさらに小さくし…というのを繰り返していくことになります。
最も効果的に防音をするには遮音と吸音の組み合わせが大切ですが、それだけではありません。
遮音材は重量があるほうが効果は高いのですが、クローゼットの中に重い遮音材だけをふんだんに使うのは物理的に無理があります。
バランス良く遮音材と吸音材を組み合わせて、効果的に防音ができるようにしましょう。
クローゼットに防音室を自作する時に必要な材料とは
さて、クローゼットに防音室を自作する場合、必要な材料とはどのようなものなのでしょうか。
一から作る防音室と違い、クローゼットには壁も扉もあるので比較的使用する材料の種類は多いわけではありません。
ただし、前述した通り、中で使用する楽器が大きく響くものや振動を感じるものであるほどに使う分量は増えていくので注意しましょう。
防音室に必要な部材は、以下の通りとなります。
●遮音材:石膏ボード、木材の板、遮音シートなど
●吸音材:グラスウール、ロックウール、ウレタン、綿、吸音ボードなど
これらの部材は、全てを使うわけではありません。
手に入れやすいものや、自分で加工しやすいものを選んで使うようにしましょう。
防音室自体に必要な部材は、挙げてみるとこれだけなのです。
後は、加工をするにあたってカッターなど切断のための道具、接着剤や強力両面テープなどの壁に貼るための道具を必要な方は揃えるようにしましょう。
木材や石膏ボードをあらかじめ加工した状態で購入する場合には、カッターなどは必要ありません。
自分の選ぶ遮音材や吸音材に合った道具を用意するようにしてください。
クローゼット防音室の具体的な作り方とは
それでは、実際にクローゼットに防音室を自作する方法についてご紹介しましょう。
まず、遮音材と吸音材の順番としては、外側が遮音材で内側が吸音材となります。
繰り返しますが、これは吸音材を通過した音が小さくなって遮音材で跳ね返るようにするためです。
遮音材に吸音材を接着して、クローゼットの壁や床全体に隙間なく貼っていくようにします。
隙間がたくさんあるとそこから音漏れをしますので、できるだけ隙間のないように貼りましょう。
また、扉にも忘れずに貼っていくようにします。
クローゼットの扉は、居室の扉のようにあえて隙間を空けて作られることがないので、それほど神経質になることはありません。
しかし、クローゼットの扉が通気性のあるルーバータイプだと途端に音漏れは大きくなりますので、扉の防音をしっかりと行うようにしましょう。
クローゼットを使用するのであれば、これだけで防音室は完成します。
後は、中にイスを設置したりマットを敷いたりと過ごしやすいような工夫をしましょう。
また、特に気を付けたいのは夏場の使用です。
クローゼットにはエアコンがないことが一般的ですから、密閉して中にいるとそれだけで温度は上がります。
また、楽器で使用するアンプは放熱するので、より温度が上がると考えられます。
夏場にはサーキュレーターを持ち込んで使用したり、こまめに換気を行うなどの対策も含めて防音室を楽しむようにしましょう。
集合住宅の場合は防音室の床をよりしっかりと
さて、防音室を自作する時の注意点でも述べましたが、立地や家の気密性、使用目的などによって防音室の質は変える必要があります。
中でも、集合住宅で2階以上の階に住んでいる場合、特に気を付けたいのが床の防音です。
集合住宅では隣家よりも上下のお部屋の物音のほうが響くという話はよく聞きますが、防音室で使用する楽器やスピーカーによっては、さらに階下への影響が出てしまうと考えます。
特に、高い音よりも低い音は防ぐことが難しいため、ベースやドラムは他の楽器と比べて、より質の高い防音対策をしたほうが良いということになります。
例えば、クローゼットの中で遮音材と吸音材を壁と同じように床にも入れたら、床にはもう一層同じものを貼るのも良いでしょう。
二重床にすることで、振動も響きにくくすることができます。
また、DIYが得意な方であれば、床を浮かせた二重床を作ってみるのも良いでしょう。
床を浮かせるというのは、防音措置を施した床に防振ゴムや木材の柱などを敷いて、空気の層を作ってからその上に新たな床を作ることを指します。
床だけではなく、スペースが許すのであれば壁も二重に作ることでより効果は高まりそうですね。
しかし、ここまで行うとコストは単純に倍ほど掛かりますし、安全面でも不安が残るかもしれません。
そのような場合は、防音措置を施した床にコルクマットを重ねるのもひとつの方法です。
コルクマットはホームセンターなどで手に入れることができますし、柔軟性と弾力性があるので、床の防音対策にはとてもおすすめです。
防音室に利用できる「身近な材料」をご紹介!
ここまで、クローゼットで防音室を自作する時に使用する材料や作り方についてご紹介しました。
しかし、設置するための工具は家にあることもありますが、遮音材や吸音材は家にあることは中々ありませんし、DIY初心者の方は購入するのをためらってしまうかもしれません。
そんな時は、家にあるものやもっと身近なものを吸音材として使用してみてはいかがでしょうか。
ただし、あくまでも防音効果が期待できるものということなので、遮音シートや吸音マットなどに比べると防音効果は低くなります。
大音量で楽器を使用する場合や、集合住宅で使用する場合には正規の防音材を使用した方が安心です。
その場合には、追加用と考えても良いかもしれませんね。
●ダンボール
ダンボールは、吸音性に優れていて加工しやすいのが特徴です。
ダンボールを使った防音室も販売しているほどに、防音効果には定評があります。
●ウレタンマットレス
家に古いものや使用していないものがあれば、ぜひ防音素材として活用しましょう。
そのままだと使いにくいので、中身を出してカットしても良いでしょう。
●有孔ボード
100均でも手に入れることができる有孔ボードは、大量に家にあることはないかもしれませんが、購入するのにハードルが低いと考えます。
防音室の内側に貼ることで吸音しつつ、見た目もおしゃれなので自宅がスタジオのように見えるかもしれません。
自作の防音室で心置きなく練習をしよう
防音室は簡単には作れないように思えますが、遮音と吸音の関係を知ることで意外にも作り方は難しくないものです。
完成品を購入すると、お部屋の中では大きすぎて持て余してしまうことも考えられますが、最初からお部屋にあるクローゼットを利用するのなら、日常生活を圧迫することもないと考えます。
音漏れを気にして、好きな時間に好きなように練習できないストレスをなくすため、自分に合った防音室を自作してみてはいかがでしょうか。